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環境にも体にもやさしい食事とは(SDGs:3, 12, 14, 15)

 私たちはSDG3番「すべての人に健康と福祉を」を中心として、SDG12番「つくる責任使う責任」や14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」を取り上げ、「環境にも体にもやさしい食事とは」をテーマにディスカッションを行った。私たちが“健康”について考えるとき、同時に出てくる概念は“病気”というもので、そこに至らないためにはどうしたら良いかと頭を悩ます。しかし、その健康と病気との境目は、明確に分かっていないのが現状だ。この中間状態を表す概念として「未病」という言葉があるが、これは、一見健康に見えても、そのままでは病気になりやすい状態のことを指す。本ディスカッションでは、未病という観点から学生同士でテーマを定め、予防に関わる普段の食事はもちろん、生産や消費の過程で負荷をかけている環境面にも焦点に当てて、広い意味での食事の在り方を考えた。


▶一人一人にとっての「環境にもからだにもやさしい食事」とは

 「環境にもからだにもやさしい食事」といっても、そのイメージや意識していることは人それぞれである。ディスカッションの始めは、このテーマに対して一人一人が着目した点を共有した。例えば、身近な料理の場面で、無農薬の野菜を使うことや油や調味料を使い過ぎないことは、環境はもちろん身体にとってもやさしいものであるという意見が出た。また、食べ物の購入や消費の際に食品ロスが出ないよう、必要な分だけ購入・調理し完食するという意識を持っている学生もいたが、これは、過食による肥満を予防することにも繋がる。他にも、食料を遠距離で運ぶとCO2の排出量が増えて環境への負荷がかかってしまうため、地産地消が大事だという意見があった。また、特定の物ばかり食べると生産と消費どちらの面においても負荷がかかるため、バランスの取れた食事が一番だという意見も上がった。一方で、肉の生産には大量の穀物が必要となるうえ、牛の排出するメタンが温室効果ガスの割合を増やしているという現状から、肉食の広がりが環境に悪影響を与えているのではと懸念し、1週間で食べる肉の量を少なくしている学生もいた。


▶ 何事においてもバランスが大事

 環境や体にやさしい食事に対して個人次元でできることは多くある一方、それらの情報を大衆に伝える際に問題になるのが、情報の流し方とそれに伴う人やモノの流れだ。分かりやすいのが、テレビの健康番組で「健康に良い食べ物はこれです!」と放送された翌日には、それが店の棚から一気に無くなるという現象だろう。これは、行き過ぎた消費を誘発する情報の流し方の問題、あるいは、一人一人にとっては小さな行動でもその数が多いことで起きてしまう問題だと言える。他に、農作物の生産で使用する化学肥料に関しては、局所的に沢山使うと土地に極端な負荷がかかってしまうなど、ミクロな視点でもバランスが重要である。一方で、過剰な環境規制により生態系のバランスが崩れてしまう場合もある。例えば、瀬戸内海の赤潮を改善するために工業排水の規制を行ったところ、発生要因でもあり生物の栄養分でもあった窒素やリンが減少して海水がきれいになり過ぎてしまい、結果的に海苔が育たなくなっているという問題だ。このことから、環境への負荷を調整するにおいてもバランスが必要であることが分かる。

 以上のように、1つに焦点を絞って取り組むと、それが行き過ぎた場合に偏りが生じて他の面に影響が出てくるため、どんな内容に対しても、バランスをいかに保つかが重要だという結論に至った。


▶問題は大きいが、まずは自分の範囲でできることから

 問題の根本解決には技術革新やシステムづくりが必要となるが、大学生次元でもできることを最後に考えた。参加した学生の中では「地産地消」の観点が大事だという声が多かった。北海道は食料自給率が高い分、身近なところで作られている食材を積極的に利用することで、地産地消を推進できる環境にある。まずは、栄養バランスや食材の取捨選択のバランスをよく考えて行動することから始められる。また、バランス問題に対しては、消費者と生産者がお互いの必要量を提示し合う、またはそのバランスを視覚化できるようなシステムをつくることで、情報の疎通と共有を行い、消費に合わせた生産、生産に合わせた消費へと繋げていくことができるだろう。

学生の声

学生1:ディスカッションのテーマである「環境にも体にも優しい食事」によって、自然環境と人の健康を維持するためにどうしたら良いか、改善すべきことは何かについて考えることができました。そこで教授や参加者の意見を聞き、何かを改善する方法を考える際には、改善したい事にだけ焦点を当てて行動を強化すると他の部分でバランスが崩れて結局は持続可能な状態からは遠ざかってしまうと気づきました。そのため、全体のバランスを考慮した改善策を考えられるような、広い視野を持ちたいと思います。

学生2:栄養を摂ることと環境を保全することのバランスの落としどころは確かに難しいと感じました。コロナ禍のマスク騒動もそうですが、環境問題だけでなく社会問題など様々な観点において情報の流し方が重要でありバランスがとても重要になってくると感じました。持続的に社会問題に関心をもってもらうにはどう工夫すればいいのかを考えさせられる有意義な時間でした。

まとめ

 「環境にも体にもやさしい食事」を個人次元だけでなく国や世界次元で本当に実現しようと思えば、大規模に行うことによる数の問題が出てくるため、その中でバランスを取るのは極めて困難なことのように感じられる。しかし、地球環境全体を見つめてみれば、元々すべての生物や環境が互いに補い合う関係を築きながらバランスを保ってきた歴史がある。私たち人間も技術や仕組みをうまく利用すれば、最適なバランスを維持できる環境を作れるはずだ。まずは、個人でバランスを考えて行動すること、そして、全体のバランスを見える化することで、より多くの人がバランス意識を持って行動できるようになるだろう。