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地球温暖化と海洋水温の上昇とその緩和策(SDGs:7, 14)

 私たちのグル―プでは、SDG14番の「海の豊かさを守ろう」と、7番の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を中心に地球温暖化と海洋の温暖化・酸性化の現状と未来予測、またそれに対する緩和策について議論した。実は、SDG14番は企業にも市民にも最も優先度が低いと言われる目標である。しかし、海の幸を愛する日本人としては海の豊かさは守っていきたい。そのため、本ディスカッションでは、海洋の環境問題と緩和策としてCO2削減とエネルギーの代替にどう向き合っていくべきかについて考えた。


▶地球温暖化の海洋生態系、生活などへの影響

 地球温暖化はどこか北極圏などだけが目に見えて大きな影響があるわけではなく、日本の近海でも、その変化を知ることができる。例えば、温かい水を好む魚種が、近年の海水温の上昇によって生息域を北上したことで津軽海峡を越えられるようになり、太平洋側と日本海側で生息域を異にしていた魚同士が混雑し、生態系の変化が起きている。

 また、秋の代表的な味覚であるサンマは寒流に乗って日本の太平洋側にやってくるが、現在の予測では、海水温の上昇により、水揚げできる地域が北に移行していき、さらに、水揚げの時期も遅くなることで、近い将来、秋の味覚であるサンマが冬の味覚になってしまう可能性があるというのだ。

 世界全体においては、海水温の上昇によって東南アジアなど、魚への食物の依存性が高い国を含む、発展途上国の多い低・中緯度地域で漁獲量が激減し、高緯度に位置する北欧やロシア・アラスカなど、北に位置する海域の漁獲量が増加するという予測もある。これによって南北問題における先進国と発展途上国のさらなる格差の拡大が懸念されている。これらの研究によるデータや予測に社会がどう向き合い、取り組んでいくのか、サイエンスのその先として我々も注視していかなければならない。


▶海洋における地球温暖化の影響を緩和するためには?

 第一には、やはり人為的なCO2の排出量を削減することである。発電時に火力などと比べ、CO2の排出量が圧倒的に少ない太陽光や風力などのグリーンエネルギーとも言われる再生可能エネルギーは、その一つの取り組みとして実際に進められている。一方で、風力発電機のブレードに鳥が衝突するバードストライクや、森林を切り開いてメガソーラーを設置することなど、「グリーン」と「グリーン」の衝突が起こることが課題として存在する。

 また、産業廃棄物になっているホタテなど貝類の殻を海中で溶けやすいよう細かく砕き、それを海に入れると酸性化の緩和につながるというものや、貝類の養殖場などでは酸性化により貝殻の形成が悪影響を受けるのを防ぐ効果があるという研究結果もあり、それらは海洋酸性化への実行可能な緩和策かもしれない。しかし、そういった対抗策の効果はあくまで短期的であり、短絡的に実行に移すのではなく、長期的な変化あるいは生態系などへの影響に関する評価が必要である。


▶一人ひとりが環境問題に意識を持っていくためには?

 環境問題に関する講演会などでのジレンマとして、話を聞きに来るのは大抵の場合、元から環境問題に関心がある人が多い。環境問題に興味のない人、あるいは本当に環境問題に取り組んでほしい人たちの耳にはなかなか情報が届かないというのが現状である。そのため、少々手厳しいが、税金やペナルティを課さないと本当に皆が意識を持つことは難しいのかもしれない。

 また、もう一つ大事な観点として、一日2ドル以下で生活する人々に「持続可能性」に取り組んでもらうのは非常に難しいということがある。明日生活するお金、食べ物がないかもしれない人々にとっては、たとえ海底や生態系を破壊したとしても、ダイナマイトを海に投げて魚を気絶させて捕る方が効率的でお金になるので、環境保護を訴えてそれをやめさせるのは難しい。そのため、「衣食足りて礼節を知る」というと語弊を生むかもしれないが、やはり貧困を無くすといいうのが、その他の課題の解決も考える上で重要であり、切り離すことができない先決課題である。

学生の声

学生1:

 SDGsの17の目標-社会の問題点は少なからず互いに関連しており、その中で自身の研究分野がどのようなインパクトを社会に与えるのか?研究意義をアピールするため、まずはどの問題を解決することが大事になるのか?等、自分の専門分野に限らない広い視座を持つことが大事になると学ぶことができました。

 自分自身、看護研究の社会的な意義を伝えることの難しさを常々感じていたが、世の中の情勢を見極め、看護分野の課題が他の専門分野(社会福祉学、教育、経済学等)の課題点とどのように重なり合っているのか一度整理し、自身の研究課題を見つめ直したいと思います。

学生2:

 「海洋問題について人々の意識を向けるためには、まず衣食住に関わる目の前の問題を解決しないと難しいよね」という話を聞いてはっとさせられた…今まではどうしたら海洋に関心をむけるかといったことしか考えられていなかったが、自分ごととして考えても自分の生活がまず成り立たないと海のことなんて考えられない。海だけでなく、他の目前の問題に目を向け解決していけるよう行動していきたいと感じ、海の問題においても身近な生活に関わる部分でアプローチしたいと思いました。


まとめ

 地球温暖化や海水温の上昇は日本においても近い将来、生活にかかわる大きな影響を及ぼし、解決には誰一人として他人事にしないことが必要である。しかし持続可能な社会を目指す上で、貧困を無くすことが他の多くの課題解決にもつながる視点を考えなければならない。環境問題の解決は経済や宗教、地域文化など様々がお互い絡み合っており、その地域、場所に応じた学際的アプローチと、今後、漁業や観光業なども長期的な視点で自ら変化していかなければならない。